サーモンピンク

28歳の久美子は、都会のビル群に囲まれたオフィスで、終わりのない書類の山と格闘していました。
「私の人生、このままでいいのかな?」
効率と正解ばかりを求められる毎日に、彼女はまるで出口のない迷路を彷徨っているような気分でした。

窓の外をふと見上げると、夕暮れ時でもないのに空が不思議な色に染まっていました。それは、見たこともないような温かくて鮮やかなサーモンピンク色でした。街中の人々が足を止め、その美しい異変に息を呑んでいます。

突然、光の粒子が集まり、一人の少女が宙から舞い降りました。彼女の名前はサーモン・ステラ。東洋的な顔立ちに、ピンク色のショートヘアがよく似合う、キュートな宇宙ガイドです。
「お疲れ様、久美子!人生の難易度設定、ちょっと高すぎじゃない?」

ステラは、キラキラと輝く一冊の本を差し出しました。表紙には『久美子専用・地球攻略本』と書かれています。
「これ、RPGの攻略本みたいなものだよ。人生をラクにクリアするための秘密のコードが書いてあるんだから!」

攻略本の一ページ目には、大きく『7:リラックス』と書かれていました。ステラは言いました。
「まずはこれ。20代の君は頑張りすぎ。エネルギーの7割は、自分を緩めるために使って。余白がないと、新しいイベントは発生しないんだよ」

次のページをめくると、『2:才能・土台』という文字が現れました。
「残りの2割は、君が元々持っている才能を磨くこと。特別な修行はいらないの。ただ、自分が『これなら自然にできる』っていう土台をしっかり固めるだけでいいんだよ」

そして最後のページには、『5:宇宙・自己中』と記されていました。
「これが最強の裏技。5割の力で、徹底的に自分のやりたいことをやる。宇宙はね、自分の望みに正直な『自己中』な人が大好きなんだから。いい子でいるのはもうおしまい!」

久美子は攻略本の言葉をなぞりながら、心が軽くなるのを感じました。
「7割リラックスして、2割の才能を信じて、5割の自己中で生きる……。合計が10を超えてるけど、それでいいの?」
ステラはウインクして答えました。
「宇宙の計算は、いつだって常識を超えてるんだよ!」

サーモンピンクの空から、キラキラとした光の粉が降ってきました。
「さあ久美子、攻略本は君の心の中にインストールしたよ。あとは自由にプレイするだけ!」
ステラは光に包まれながら、空の彼方へとゆっくり戻っていきました。

翌朝、久美子はいつものオフィスへ向かいました。でも、昨日までとは景色が違って見えます。彼女の足取りは軽く、世界は淡いサーモンピンク色の光に満ちていました。
「私だけの攻略本があるから、もう迷わない」
新しい冒険が、今始まったのです。