宇宙船

「スタアデイト60.0!ついにこの日が来たわ!」
宇宙船ユキエ号のブリッジで、キャプテン幸恵は高らかに宣言しました。丸っこいフォルムの宇宙船は、彼女の華やかな感性を反映して、キラキラのステッカーと派手なネオンでデコレーションされています。
「15年にわたるアカシック学習航海も今日でおしまい。明日からは未知の領域よ!」

「キャプテン、そんなに張り切ると知恵のシールドがオーバーヒートしますよ」と、ナビゲーターロボのオセロくんが冷静に突っ込みました。彼はブリキのおもちゃのような愛嬌のある姿ですが、計算能力は銀河一です。
「次の目的地は『花道セクター』。ここからはリラックスが最大の武器になるエリアです」

突然、警報が鳴り響きました!
「大変です!『空気を読みすぎモンスター』が出現しました!」
前方の宇宙空間に、モヤモヤとした灰色の雲が広がります。これこそが幸恵の唯一の弱点、Lv.4の平和主義が引き起こすエネルギーロスです。
「あわわ、みんなの機嫌を損ねてないかしら…」
幸恵のパワーがみるみる減っていきます。

「いけません、キャプテン!宇宙的な自己中になるのです!」
オセロくんが叫びました。
「これを使ってください、銀河最強の燃料です!」
彼が差し出したのは、伝説のサウンドトラック『米津玄師』のデータチップでした。幸恵はそれをヘッドフォンで耳に流し込みました。

ズン、ズン、チャッ!強烈なリズムが幸恵の全身を駆け抜けます。
「キ、キタわーーー!エネルギー満タンよ!」
幸恵の瞳に炎が宿ります。Lv.9の「華やかさ」が動力源と結びつき、彼女の周りには色とりどりの花と音符が飛び交い始めました。

「見なさい!これが私の歩んできた道よ!」
幸恵が叫ぶと、宇宙船ユキエ号から黄金のバリアが展開されました。それは過去の過酷な経験をすべて知恵に変えてきた、Lv.8の「使命のシールド」です。灰色のモンスターは、その輝きに触れた途端、あとかたもなく消え去りました。

モヤモヤが消えたあとには、キラキラと輝く小さなメダルが残されていました。
「キャプテン、やりましたね。過去のトラウマはすべて『経験値メダル』に精算されました」とオセロくん。
幸恵はその中の一つを手に取り、誇らしげに掲げました。
「苦労も全部、面白いお姉さんになるためのスパイスだったのね!」

「さあ、オセロくん!フルスロットルよ!」
ユキエ号の前方に、巨大な赤い花の形をしたワープゲートが現れました。還暦を祝う「花道セクター」への入り口です。オセロくんがレバーを引くと、船体は真っ赤な光に包まれ、加速し始めました。

ワープを抜けると、そこには見たこともないほど穏やかで美しい宇宙が広がっていました。
「ここでは、自分の胸の高鳴りだけがルールよ」
幸恵はキャプテンシートをリクライニングさせ、お気に入りのティーカップを手に取りました。
「これからはもっと自由に、自分勝手に楽しませてもらうわ!」

幸恵は宇宙服を脱ぎ捨て、お気に入りのドレスに着替えると、星々の上をスキップで進み始めました。後ろではオセロくんが慌てて追いかけています。
「還暦なんて、ただのスタートライン!さあ、面白い冒険を始めましょう!」
彼女の進む道には、色鮮やかな花々が次々と咲き誇っていくのでした。